豊かな時代になるに連れ世界的に問題になっている肥満。欧米やヨーロッパだけの問題ではなく日本を含め中国や韓国などでも肥満人口は増えており、年齢も若年化しています。
そもそも肥満は、食生活など生活習慣と環境が原因として考えられがちですが、実は遺伝子とも深い関係があることも分かっていて、遺伝と環境は相互しているとも言われているのです。
今回は肥満は遺伝子とどう関係しているのか?や、肥満児にならないための対策、遺伝子検査についてまとめました。
目次
肥満の基準
まずは現代の肥満の基準と体脂肪データから説明します。
- 2000年まで=25以上
- 2011年から=35以上
2000年に肥満症の判断基準が定められ、11年後となる2011年には見直しが行われました。改訂は2000年に発表された「肥満度の診断基準」の有用性を検証したもので、2011年まで約10年にわたって収集された肥満症に関する研究成果と実際に治療のすり合わせから導き出された数値です。
2000年に定められた肥満症の基準値、BMIが25というのには変わりありませんが、2011年に発表された判断基準には新しい肥満度分類としてBMI35以上は「高度肥満」と位置付けられました。
ちなみに、この高肥満度になるBMI30以上の人口を見てみると欧米では30%以上にもなるようです。日本ではこの10分の1となる3%しか現状では確認できていません。しかし「肥満が起因となる病気に関しては大きな差がない」という報告があります。
体脂肪・ウエストサイズの肥満基準
- 【ウエストサイズ】
- ・男性:85㎝以上
- ・女性:90㎝以上
- 【体脂肪】
- ・男性:20%以上
- ・女性:30%以上
日本人はもともとタンパク質を魚と大豆から摂取してきたため、肉中心とする生活をしてきた欧米人に比べると体質的に肥満から病気を発症するリスクが高いと考えられています。
肥満と遺伝子の関係について

家庭環境、生活習慣、食生活が主な原因と思われがちな肥満も、実は学力・身体能力・感性と同じく遺伝子が関係していることが分かっています。
しかもその数は40~60種類。
1994年に発表された、アメリカ・ロックフェラー大学のジェフリー・フリードマン博士の実験によると、食べても食べても食欲が落ちないマウスに対し、正常なマウスの血液を輸血したところ食欲は改善され正常にもどったということでした。
この研究によって“レプチン”という物質が肥満と関係していることが判明しました。レプチンは抗肥満ホルモンで食欲の抑制とエネルギー消費を促進する働きがあります。食欲が落ちないマウスはレプチンを作る遺伝子が正常に働いていないことが分かったのです。
また、オーストラリアで行われた8歳~9歳の子ども3,000人以上を調べたところ、母親が平均的な体重でも父親が肥満であった場合、子どもの肥満リスクは高くなるという結果が報告されています。
そして今現在、日本人の肥満になる可能性が高い遺伝子として3つの遺伝子が特に注目されています。市販のDTC遺伝子検査キットではこの3つを主に測定していて、太りやすいかどうかを簡単に調べることが可能です。
ちなみに、両親との関係で説明すると、両親ともに肥満の場合は80%、どちらかが肥満の場合は50%、共に標準であれば10%の確率で肥満になりやすいとされています。
日本人に多い肥満のタイプ
- ①β3AR(アドレナリン受容体遺伝子)
- ⇒日本人の34%がもつとされている遺伝子。基礎代謝量がもっていない人に比べ200kcal低い。
- ②β2AP(アドレナリン受容体遺伝子)
- ⇒日本人の16%がもつとされている遺伝子。基礎代謝量がもっていない人に比べ100kcal高い。
- ③UCP1(アンカップリングプロテイン遺伝子)
- ⇒日本人の25%がもつとされている遺伝子。基礎代謝量がもっていない人に比べ100kcal低い。
肥満のリスクを調べる場合、市販のDTC遺伝子検査キットでは主にこの3つが検査されていますが、遺伝子一つひとつは、あらゆることに関係していることもあるため、この他にも肥満と関係している遺伝子は存在するのかもしれません。
子どもの肥満人口と病気のリスク
経済産業省のホームページに公開されている情報に、年齢別 肥満傾向児の出現率の推移というものがあります。以下の画像は昭和52年から10年起きに、5歳・7歳・10歳・13歳のデータを抜粋しグラフにしたものです。(縦軸はパーセント)

このデータを見ていただくと分かりますが、年齢によっては昭和から平成28年にかけて子どもの肥満人口が倍になっています。30年間で見ると2~3倍も肥満の出現率は高く、小児期メタボリックシンドロームの数も増加傾向にあり、「メタボ」という言葉が成人だけではなくなっていることが分かります。
計算方法
肥満であるかどうかの判断については計算方式があり、以下にあてはめて計算することができます。
肥満度=[実測体重(kg)-身長別標準体重(kg)]/身長別標準体重(kg)×100(%)
幼児の場合は15%を超えると「太りぎみ」で、20%以上になると「少し太り過ぎ」、そして30%以上は「太りすぎ」とされ、20%以上は「軽度の肥満」、30%以上を「中度」、50%以上を「高肥満度」に分けられます。
中性脂肪・血圧・血糖値で判断する場合
- 中性脂肪が120mg/dL以上
- 血糖100mg/dL以上(空腹時採血)
- 血圧125mmHg以上
以上の基準値に該当するかどうかで確認できます。
昭和から平成、現在にかけて肥満児が増えた拝見には食生活と家庭環境の変化にあります。
食生活ではコンビニや外食チェーン店が続々と増え、高カロリー・高脂質の食品を手軽に食べれるようになりました。平成になり共働きが増えた家庭環境においては非常に便利で、手軽に栄養を補給することができるようになったわけですが、それに連れて外で遊べる環境が減りゲームや習い事をはじめる子どもが増えたことによる運動量の低下も、こういった状況を作ってしまうきっかけとなっています。
また、核家族も増加したことで食事をバラバラに摂ることが一般的になりました。これらの原因が肥満児を増やすきっかけになってしまったことは間違いありません。そしてその結果、昭和の子どもにはほとんど見られなかった病気や合併症が現代の子どもに多く見られるようになっています。
子ども、自分が太りやすいかどうかを調べるには
一定の年齢を超えると(各社規定が異なります)太りやすいかどうかを民間で販売されているDTC検査キットを使って調べることが可能です。このキットはβ3AR・β2AP・UCP1と肥満と関係する遺伝子を調べる検査キットです。
肥満と遺伝子の関係についてで説明したように、β3ARは日本人の34%が保持している遺伝子で糖質の代謝が悪いといった影響を及ぼします。β2APは脂質の代謝に関係していて、持っていると基礎代謝がもっていない人に比べると約200kcal高いですが一度太ると痩せにくいタイプです。そしてUCP1は、日本人の25%が保持していて下半身が太りやすく脂肪の代謝が悪いといった特徴があります。
その他、3つの遺伝子を調べる以外にも肥満と関係している遺伝子を検査することができるキットを販売している企業もあり、手軽に調べることが可能です。
子どもに関しては『DHCの遺伝子検査ダイエット対策キット』で調べることができますが、両親どちらかの同意が必要となるようです。
肥満にならない、させないためにできること

子どものうちから肥満になると、大人になったとき病気のリスクが高くなります。大人の場合でも重病に繋がり、時には命の危機にもさらされることもあります。肥満にならないためには、自分の体質をしっかり把握し、消費カロリーよりも接種カロリーが上回ってしまわないように心がけることです。
そして、お子さんがいる方で同じように肥満になってほしくない方は、同じ生活習慣を送らないことが重要です。病気の要因には遺伝的要素と環境的な要素があると言われていますが、環境が遺伝子を形成することもあるとされています。
コンビニやファーストフードなど、非常に便利で美味しいものが手軽に購入できる時代になりましたが、肥満を予防するには健康的な食事バランスを意識しカロリー・脂質と肥満の原因となる出来合いのものはなるべく避けるようにしましょう。
もともと「自分は太りやすいのでは?」と思われる方は、一度遺伝子検査を試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今は大人だけでなく子どもにも肥満やメタボが増えています。そして、その肥満は大きな病気に繋がるかもしれません。将来的な肥満リスクを子どものうちから正確に知ることは難しいですが、普段から食生活には気を付けて適度な運動をを心がけましょう。
そして、既に肥満と診断されてしまった方でお子さんがいる場合は、親の生活環境が子どもの肥満遺伝子のスイッチをONにしてしまわないように気を付けましょう。
