(※画像:市川衛氏「注文を「忘れる」料理店 ふしぎなお店が目指すものは」)
2017年6月3日、4日の期間限定で『注文をまちがえる料理店』という飲食店がOPENし、瞬く間にTwitterなどで話題になりました。今後はクラウドファンディングなどで資金を集め、9月あたりに再び1週間ほどの本OPENを目指すとのこと。
この企画は認知症を抱える人々との付き合い方のモデルケースとなるかもしれません。今回、その舞台裏に迫った記事が公開されていたので紹介します。
認知症を抱える女性らが働く料理店
「注文をまちがえる料理店」で働く人のなかには、認知症を抱えている人がいます。オーダーを受けたり配膳したりする女性ら6名が認知症を抱えているため、もしかすると注文を間違えてしまうかもしれないそうです。利用者も事前に知っていれば、たとえ違うものが届いたとしてもホッコリしそうですね。
認知症を抱えているため、ときにはテーブルまでオーダーを取りにきても何をしに来たのかを忘れてしまっったり、注文をお客さんに書いてもらったりすることもあるそうです。
間違えても『仕方ないよね』といえる空気をつくろう
この企画を生み出した仕掛け人は、かつて認知症介護のドキュメンタリー番組を製作した経験がありました。
この企画は、どんなきっかけで思いつかれたんですか?
4年前、認知症介護のプロのドキュメンタリー番組を作っていたときに経験した、ある「間違え」がきっかけです。
番組の舞台となったグループホームで生活する認知症の方々は、買い物も料理も掃除も洗濯も、自分が出来ることはすべてやります。僕はロケの合間に、おじいさん、おばあさんの作る料理を何度かごちそうになっていました。ある日のこと、聞いていた献立はハンバーグだったのに、餃子が出てきたことがありました。
「あれ?今日はたしかハンバーグでしたよね?」と喉元までこみ上げましたが、うっと踏みとどまりました。その言葉を発してしまうと、なんだか気持ちが窮屈になってしまうんじゃないか、と思ったのです。
同時に、この言葉を突き詰めた先に、誰もがいまよりもちょっと呼吸のしやすい世界の姿があるんじゃないか?と思ったんです。
「餃子になっちゃったけど、別にいいよね」
法律や制度を変えることももちろん大切だと思いますが、私たちがほんのちょっと寛容であることで解決する問題もたくさんあるんじゃないか。
間違えることを受け入れる、間違えることを一緒に楽しむ。そんな新しい価値観をこの不思議なレストランから発信できればと思います。
「間違えても、受け取る側がほんの少し寛容になれば解決する問題もあるのではないか?」と感じたことから始まった料理店。認知症だけでなく、介護全般にも通じる考えかたではないでしょうか。
たとえ違うものが出てきても「仕方ないか」で受け入れられる空気感。働く人も訪れる人も、不思議と笑顔になるような仕組みが少しずつ作られているのを感じます。
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認知症は高齢者に多いとのこと。メディアでは「超高齢化社会」や「介護疲れ」など、まるで老いることが悪いかのように取り扱われているなかで、『注文を忘れる料理店』のようなワクワクするものが登場してきているのは本当に嬉しいですね。
インタビュー全文や料理店で働く人々の様子など、本文はこちらに掲載されています。
